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きんぴらごぼうを作るようになった。きのこを毎日入れるようにした。白いごはんを玄米に替えて、ヨーグルトにおからパウダーを混ぜて、もち麦も買ってみた。体にいいことを、ちゃんとやっているつもりでした。
なのに——出ない。というより、前より出なくなった。お腹はパンパンに張って、おならばかり増えて、夕方にはスカートのウエストが痛い。「腸活してるのに、なんで悪くなるの?」と検索して、たどり着いたのが「食物繊維には水溶性と不溶性がある」という話。それで、どっちを摂ればいいの?——ここで手が止まった人が、たくさんいます。
この記事では、その質問に正面から答えます。ただし先に、いちばん大事なことを言わせてください。あなたの体は失敗していません。増やした繊維の種類が、あなたの症状と逆だっただけです。
そしてもうひとつ。「どっちがいいか」は、実は日本の公式な調査データが答えを出しています。日本人がいま食べている食物繊維の内訳は、水溶性3.5g・不溶性11.3g。すでに不溶性のほうを3倍以上食べています。それでも「腸活におすすめ」として紹介される食材のほとんどが、不溶性のほうが多い食品なのです。
この記事は、①日本人の摂取量の公式データ ②食品ごとの水溶性・不溶性の実数(1,345食品ぶん) ③日本消化器病学会の診療ガイドライン(=治療の手引き)——この3つの一次情報だけを土台に組み立てました。よくある「食物繊維が多い食品ランキング」ではなく、あなたが今週、何を減らして何に替えるかまで書きます。
この記事の内容
先に結論——「どっち」の答えは、あなたの症状で逆になる
「水溶性と不溶性、どっちがいいですか」という質問には、正しい答えが1つだけあります。それは「あなたが今どちらの状態かで、答えが逆になります」です。曖昧に見えるかもしれませんが、逆です。ここを分けないから、多くの人が自分に合わないほうを増やしてしまいます。
| 今のあなたの状態 | 増やすのは | 理由 |
|---|---|---|
| ① 便が硬い・コロコロ 出にくいが、張りも痛みもない |
不溶性でよい | 便のかさを増やして腸を動かす働きが、そのまま欲しい効果になる |
| ② お腹が張る・痛い ガスが多い・出しても残る |
不溶性を止めて 水溶性へ |
不溶性は腹痛を悪化させたという報告がある。渋滞している道にかさを足すと詰まる |
| ③ ゆるい・下痢気味 急に出る日と出ない日がある |
水溶性を少量から | 水を抱えてゲルになる性質が、ゆるい便にも硬い便にも同じ方向で働く |
この記事を読んでいる人の多くは、たぶん②です。なぜなら①の人は、繊維を増やせばうまくいくので検索しないからです。「増やしたのに悪化した」で検索している時点で、あなたはもう②に入っています。そして②の人が世の中の「腸活おすすめ食材」をそのまま実行すると、ほぼ確実に不溶性が増えます。これがこの記事の中心です。
この記事で最初に押さえてほしい3行
① 日本人の摂取量は水溶性3.5g・不溶性11.3g。足りていないのは水溶性のほう。
② それなのに「腸活食材」の定番は、ほぼ全部が不溶性のほうが多い食品。
③ 学会の手引きで有用性が確認されたのは水溶性(可溶性)のほうだけ。不溶性は腹痛を悪化させた報告がある。
この3行が、以下の章で全部一次情報から確認できます。順番に見ていきます。
日本人はすでに不溶性を3倍食べている(公式データ)
「食物繊維が足りていない」という話は、耳にタコができるほど聞きます。でも「どっちの繊維が足りていないのか」を書いている記事は、ほとんどありません。これは調べれば分かることなのに、なぜか語られない部分です。
国民健康・栄養調査(令和6年/2024年10〜11月実施)には、食物繊維の摂取量が「総量」だけでなく「水溶性」「不溶性」に分けて載っています。20歳以上の男女を合わせた1日あたりの平均値がこれです。
| 区分 | 総量 | 水溶性 | 不溶性 |
|---|---|---|---|
| 20歳以上(男女計) | 18.1g | 3.5g | 11.3g |
| 男性(1歳以上) | 18.8g | 3.5g | 11.4g |
| 女性(1歳以上) | 16.7g | 3.4g | 10.6g |
水溶性3.5gに対して、不溶性11.3g。すでに3倍以上、不溶性のほうを食べています。水溶性は、内訳のなかで5分の1ほどしかありません。
この数字を頭に置いて、もう一度考えてみてください。「食物繊維が足りないから増やそう」と言われて、あなたがごぼう・きのこ・玄米・おからを足したとします。それは、すでに3倍ある側に、さらに積み増す行為です。足りていない側は、ほとんど増えません。第4章で食材ごとの実数を出しますが、これは推測ではなく、公式の成分表を全部並べれば誰でも確認できる事実です。
では、1日に何グラム摂ればいいのか
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で示されている食物繊維の目標量は、成人男性で1日20g以上、成人女性で1日18g以上です。そして「理想的にはこのくらい」とされているのが1日25g以上で、世界保健機関(WHO)の手引きでも同じ量が推奨されています。
| 基準 | 1日あたり | 実態との差 |
|---|---|---|
| 理想的な量 | 25g以上 | 実態18.1gとは7g近い開き |
| 目標量(男性) | 20g以上 | 男性18.8gなので、あと1〜2g |
| 目標量(女性) | 18g以上 | 女性16.7gなので、あと1〜2g |
ここで気づいてほしいことがあります。目標量まではあと1〜2gしかありません。「日本人は食物繊維がまったく足りていない」というほど遠くはないのです。それなのに便通の悩みが減らないのはなぜか。足りないのは総量ではなく、水溶性のほうだからという見方が、素直に筋が通ります。
なお、この表の水溶性と不溶性を足すと14.8gで、総量18.1gとぴったり合いません。これは総量と内訳で分析のやり方が違うためです。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、食物繊維は新しい分析法で測った値が多く収載されるようになり、従来法とは測っている範囲が違うと説明されています。数字が合わないのは間違いではなく、測り方の乗り換え途中だからです。この記事では、水溶性と不溶性を比べるときは必ず従来法どうしの数字で比べています。
2つの違いは「ゲルになる」か「かさが増える」か
名前がまぎらわしいので、まず働きの違いを体の中の絵で押さえます。日本消化器病学会の診療ガイドライン(=治療の手引き)では、食物繊維は水に溶ける繊維(可溶性繊維)と溶けない繊維(不溶性繊維)の2つに大きく分けられ、それぞれの働きがこう説明されています。
| 水溶性(可溶性) | 不溶性 | |
|---|---|---|
| 腸の中で | 水を抱えてゲル状になる | すじの構造の中に水を吸って膨らむ |
| 便に対して | やわらかくして移動しやすくする | 便そのものの量(かさ)を増やす |
| 腸への刺激 | 刺激よりも、すべりをよくする側 | 腸の動き(ぜん動)を刺激する |
| 代表的なもの | オオバコ(サイリウム) | 小麦ふすま |
| 向いている人 | 張る・痛い・ガスが多い人/ゆるい人 | 硬くて出ない、それ以外の症状がない人 |
「かさを増やして腸を刺激する」——これが不溶性の売りです。便が硬くて量も少ない人にとっては、まさに欲しい働きです。だから不溶性は悪者ではありません。ただし、この説明をもう一度よく読んでください。すでに腸の中で流れが止まっている人にとって、「量を増やして刺激する」は何を意味するでしょうか。
渋滞している高速道路に、車をもっと流し込む。そういうことです。しかも不溶性は水を吸って膨らむので、水分が足りていなければ、膨らんだまま固まって余計に動きにくくなります。「食物繊維を増やしたらむしろ出なくなった」という体験は、体がおかしいのではなく働きの説明どおりの結果なのです。
「腸内細菌のエサになる」のは、主に水溶性のほう
腸活の文脈でよく出てくる「腸内細菌のエサになる」という働きは、主に水溶性の側の話です。水溶性の繊維は大腸で細菌に分解され、そのときに体にとって有用な物質が作られます。ただし、分解されるということは、同時にガスも出るということです。ここが第7章の伏線になります。「水溶性ならいくら摂っても安全」ではありません。
一方、不溶性の繊維は細菌に分解されにくいので、ガスの材料にはなりにくい。「じゃあ張っている人には不溶性のほうがいいのでは?」と思うかもしれません。ここが最も誤解されるところです。不溶性がガスを出しにくいのは事実ですが、張りの原因はガスだけではありません。かさが増えて流れが遅くなること自体が、張りと痛みを生みます。学会の手引きが実際に何と書いているかは、第5章で原文どおりに紹介します。
【一覧】その食材はどっち?公式成分表の実数で全部出します
ここがこの記事の本体です。「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の炭水化物成分表には、食品ごとの水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の実数が載った表があります。収載されているのは1,345食品。この記事では、そこから腸活でよく名前が挙がる食材を抜き出して、そのまま並べます。
単位はすべて可食部100gあたりのグラム数です。まず、あなたが増やしたかもしれない食材から見てください。
❶ 定番の「腸活食材」は、ほぼ全部が不溶性のほうが多い
| 食品(可食部100gあたり) | 水溶性 | 不溶性 | かたより |
|---|---|---|---|
| おから(生) | 0.4 | 11.1 | 1 : 28 |
| 干ししいたけ(乾) | 2.7 | 44.0 | 1 : 16 |
| 大豆(国産・乾) | 1.5 | 16.4 | 1 : 11 |
| きな粉(黄大豆・全粒) | 2.7 | 15.4 | 1 : 6 |
| あずき(全粒・乾) | 1.0 | 14.2 | 1 : 14 |
| 切り干し大根(乾) | 5.2 | 16.1 | 1 : 3 |
| アーモンド(乾) | 0.8 | 9.3 | 1 : 12 |
| よもぎ(葉・生) | 0.9 | 6.9 | 1 : 8 |
| オートミール | 3.2 | 6.2 | 1 : 2 |
| 納豆(糸引き) | 2.3 | 4.4 | 1 : 2 |
| ブロッコリー(生) | 0.9 | 4.3 | 1 : 5 |
| 生しいたけ(生) | 0.4 | 4.1 | 1 : 10 |
| アボカド(生) | 1.7 | 3.9 | 1 : 2 |
| オクラ(生) | 1.4 | 3.6 | 1 : 3 |
| えのきたけ(生) | 0.4 | 3.5 | 1 : 9 |
| ごぼう(生) | 2.3 | 3.4 | ほぼ半々 |
| まいたけ(生) | 0.3 | 3.2 | 1 : 11 |
| ぶなしめじ(生) | 0.3 | 3.2 | 1 : 11 |
| エリンギ(生) | 0.2 | 3.2 | 1 : 16 |
| たけのこ(ゆで) | 0.4 | 2.9 | 1 : 7 |
| ほうれん草(生) | 0.7 | 2.1 | 1 : 3 |
| にんじん(皮なし・生) | 0.8 | 1.9 | 1 : 2 |
| さつまいも(皮なし・蒸し) | 0.6 | 1.7 | 1 : 3 |
| キャベツ(生) | 0.4 | 1.4 | 1 : 3 |
| きくいも(生) | 0.5 | 1.4 | 1 : 3 |
| りんご(皮つき・生) | 0.5 | 1.4 | 1 : 3 |
| 玄米ごはん | 0.2 | 1.2 | 1 : 6 |
| キウイ(緑・生) | 0.6 | 2.0 | 1 : 3 |
| たまねぎ(生) | 0.4 | 1.0 | 1 : 2 |
| バナナ(生) | 0.1 | 1.0 | 1 : 10 |
| レタス(生) | 0.1 | 1.0 | 1 : 10 |
| 白米ごはん | 0.0 | 0.3 | 不溶性のみ |
この表を、少し離れて眺めてみてください。32品のうち、水溶性のほうが多い食品は1つもありません。「腸活といえばこれ」と言われる食材が、上から下まで全部、不溶性に大きくかたよっています。
とくに目を引くのが3つです。
おから。水溶性0.4に対して不溶性11.1。比でいえば1対28です。「おからパウダーをヨーグルトに混ぜて腸活」は、水溶性をほとんど増やさずに不溶性だけを一気に積み増す食べ方になります。乾燥おからだと不溶性は42.1まで上がります。
きのこ類。ぶなしめじ0.3対3.2、えのき0.4対3.5、エリンギ0.2対3.2、まいたけ0.3対3.2、生しいたけ0.4対4.1。きのこは、ほぼ純粋な不溶性食品です。「食物繊維が豊富で低カロリー」は本当ですが、豊富なのは片方だけです。
ごぼう。ここは少し違います。水溶性2.3対不溶性3.4で、不溶性優位ではあるものの、日常の野菜としては水溶性がかなり多いほうです。ごぼうが「腸にいい」と言われるのは間違いではありません。ただし、張っている人にとっては後述の別の問題があります(第7章)。
そしてレタスとバナナ。どちらも水溶性0.1、不溶性1.0で、比は1対10。そもそも総量そのものが少ないので、便通対策として量を稼ぐのは現実的ではありません。サラダを山盛り食べても、繊維の総量ではきのこ一掴みに届きません。
❷ 水溶性のほうが多い食品は、驚くほど少ない
では逆に、水溶性が不溶性を上回る食品はどれくらいあるのか。1,345食品を全部見て、日常的に食卓にのぼるものだけを抜き出すと——これだけです。
| 食品(可食部100gあたり) | 水溶性 | 不溶性 | かたより |
|---|---|---|---|
| こんにゃく精粉(粉の状態) | 73.3 | 6.6 | 11 : 1 |
| らっきょう(生) | 18.6 | 2.1 | 9 : 1 |
| エシャレット(生) | 9.1 | 2.3 | 4 : 1 |
| 七分つき押麦 | 6.3 | 4.0 | 2 : 1 |
| アーティチョーク(ゆで) | 6.3 | 2.3 | 3 : 1 |
| アーティチョーク(生) | 6.1 | 2.6 | 2 : 1 |
| 押麦(乾) | 4.3 | 3.6 | ほぼ半々 |
| 大麦めん(乾) | 3.6 | 2.7 | ほぼ半々 |
8つしかありません。しかも、こんにゃく精粉は粉の状態、らっきょうとエシャレットは薬味、アーティチョークは日本の食卓では日常食ではありません。普通のごはんとして毎日食べられて、水溶性のほうが多い食品は、実質「押麦」だけです。
七分つき押麦が水溶性6.3対不溶性4.0、押麦(乾)が4.3対3.6。麦に含まれるβ-グルカンという水溶性の繊維のおかげです。白いごはんに大さじ数杯混ぜるだけで、水溶性を増やす方向に効きます。「水溶性を増やしたい」という人にとって、押麦は現実的にほぼ唯一の主食です。
なお、よく比べられるオートミールは水溶性3.2対不溶性6.2で、水溶性も多いけれど不溶性のほうが2倍あります。「オートミールにしたら張った」という声があるのは、この数字を見ると納得できます。オートミールが悪いのではなく、押麦とは性格が違うということです。
❸ 豆・ナッツ・雑穀——「体にいい」ほど不溶性が高い
健康志向で足しやすいものも、まとめて実数を出します。
| 食品(可食部100gあたり) | 水溶性 | 不溶性 | かたより |
|---|---|---|---|
| いんげん豆(乾) | 3.3 | 16.2 | 1 : 5 |
| レンズ豆(乾) | 1.0 | 15.7 | 1 : 16 |
| ひよこ豆(乾) | 1.2 | 15.1 | 1 : 13 |
| 小麦はいが | 0.7 | 13.6 | 1 : 19 |
| ごま(乾) | 1.6 | 9.2 | 1 : 6 |
| くるみ(いり) | 0.6 | 6.9 | 1 : 12 |
| 落花生(乾) | 0.5 | 7.0 | 1 : 14 |
| ライ麦粉 | 4.7 | 8.2 | 1 : 2 |
| ライ麦パン | 2.0 | 3.6 | 1 : 2 |
| そば粉(全層粉) | 0.8 | 3.5 | 1 : 4 |
| そば(ゆで) | 0.5 | 1.5 | 1 : 3 |
| 食パン(角形) | 0.4 | 1.9 | 1 : 5 |
| うどん(ゆで) | 0.2 | 0.6 | 1 : 3 |
| 豆腐(木綿) | 0.1 | 0.3 | 1 : 3 |
| 豆乳 | 0.2 | 0.0 | 水溶性のみ |
豆類は乾燥した状態で見ると、どれも不溶性が15前後あります。ゆでれば水を含むので100gあたりの数字は下がりますが、比のかたよりは変わりません。「豆を食べると必ずおならが出る」というのは、豆に含まれる別の成分(第7章)と、この不溶性の多さの合わせ技です。
見落とされやすいのが豆乳と豆腐です。豆乳は水溶性0.2、不溶性0.0。木綿豆腐は0.1対0.3。大豆製品なのに、繊維はほぼ残っていません。豆乳を飲んで「大豆で腸活している」と思っている人は多いのですが、繊維の観点では期待できません。おからのほうにほぼ全部行っているからです。
❹ こんにゃくの落とし穴——「水溶性73.3g」の正体
ここは、この記事でいちばん多くの人が驚くところだと思います。「こんにゃくは水溶性食物繊維(グルコマンナン)が豊富」という説明を、あなたも読んだことがあるはずです。成分表を引くと、たしかにこんにゃく精粉は水溶性73.3という圧倒的な数字が出てきます。
問題は、その隣の行です。
| 食品(可食部100gあたり) | 水溶性 | 不溶性 | かたより |
|---|---|---|---|
| こんにゃく精粉(原料の粉) | 73.3 | 6.6 | 11 : 1 |
| 板こんにゃく(精粉から) | 0.1 | 2.1 | 1 : 21 |
| 板こんにゃく(生いもから) | 0.0 | 3.0 | 不溶性のみ |
| しらたき | 0.0 | 2.9 | 不溶性のみ |
| 凍みこんにゃく(乾) | 0.9 | 70.4 | 1 : 78 |
見てください。板こんにゃくの水溶性は0.1です。しらたきは0.0です。精粉の73.3は、こんにゃくを固める前の「粉」の数字であって、私たちがおでんや煮物で食べている板こんにゃくの数字ではありません。固める工程で、水溶性のグルコマンナンは水に溶けない形に変わります。だから食べる形になったこんにゃくは、実質「不溶性食品」です。
これは意地悪な指摘ではありません。「水溶性を増やしたいからしらたきを食べる」という選択が、実際には不溶性を増やしていた——この行き違いは、粉の数字だけを引用した情報が出回ることで生まれます。原本を1行下まで読めば分かることです。
❺ 皮をむく・ジュースにする——加工で繊維はどこまで消えるか
| 食品(可食部100gあたり) | 水溶性 | 不溶性 | かたより |
|---|---|---|---|
| りんご(皮つき・生) | 0.5 | 1.4 | 1 : 3 |
| りんご(皮なし・生) | 0.4 | 1.0 | 1 : 2 |
| りんごジュース(ストレート) | 0.0 | 0.0 | 繊維ほぼ0 |
| にんじん(皮つき・生) | 0.7 | 2.1 | 1 : 3 |
| にんじん(皮なし・素揚げ) | 0.3 | 0.8 | 1 : 3 |
| さつまいも(皮つき・蒸し) | 1.0 | 2.8 | 1 : 3 |
| さつまいも(皮なし・蒸し) | 0.6 | 1.7 | 1 : 3 |
りんごジュース(ストレート)は水溶性0.0・不溶性0.0。搾った時点で繊維は残りません。「野菜不足だからジュースで」は、繊維の観点では成立しないということです。
一方で、りんごは皮つき0.5対1.4、皮なし0.4対1.0。にんじんは皮つき0.7対2.1、皮なしを素揚げにすると0.3対0.8まで落ちます。皮をむく・油で揚げる・搾る。この3つで繊維は目に見えて減ります。逆に言えば、皮つきで蒸すのが一番残る食べ方です(さつまいもは皮つき蒸しで水溶性1.0・不溶性2.8、皮なし蒸しで0.6・1.7)。
❻ 【重要】調べても「公式の答えが存在しない」食品があります
ここは、ほかで読めない話だと思います。「わかめの水溶性食物繊維は何グラム?」と検索すると、数字を書いているページがたくさん出てきます。ところが——公式の成分表には、その内訳が載っていません。
水溶性と不溶性の内訳が収載されている1,345食品のうち、59食品は内訳が空欄で、総量だけが分かります。そして空欄になっている食品のほとんどが、海藻です。
| 内訳が公表されていない食品 | 件数 | 分かるのは総量だけ |
|---|---|---|
| こんぶ類 | 11件 | — |
| わかめ | 9件 | 原藻(生)3.6/カットわかめ(乾)35.4 |
| ひじき | 6件 | ほしひじき(乾)51.8/ゆで3.7 |
| てんぐさ(寒天の原料) | 5件 | 粉寒天79.0/角寒天74.1 |
| のり類・もずく・その他の海藻 | 残り | — |
つまり「わかめの水溶性は◯g」「寒天の水溶性は◯g」と数字で書いているページは、公式の成分表を出典にはできません。海藻の繊維が水に溶けやすい性質を持つこと自体は知られていますが、成分表の枠組みでの内訳は公表されていない。それが現状です。
同じように、成分表の内訳の表に収載そのものがない食品もあります。腸活でよく名前が出るのに、公式の水溶性・不溶性の数字が引けないものです。
| 食品 | この記事での扱い |
|---|---|
| もち麦 | 「もち麦」という収載名はありません。大麦の品種名なので、成分表では「押麦」「七分つき押麦」などの大麦の数字で見ることになります |
| オオバコ(サイリウム) | 収載なし。食品ではなく粉として売られているため。ただし学会の手引きで名前が挙がっているのはこれです(第5章) |
| 小麦ふすま | 収載なし。近いものとして小麦はいがが水溶性0.7・不溶性13.6 |
| チアシード | 収載なし。近いものとして、あまに(いり)が水溶性9.1・不溶性14.7 |
「分からないものは分からないと書く」のは、遠回りに見えるかもしれません。でもあなたが今週の買い物を決めるのに必要なのは、断言してくれる誰かではなく、確かめられる数字です。ここまでの表は、すべて公式の成分表からそのまま引いています。
「増やしたのに悪化した」の正体——学会の手引きが書いていること
ここまでは「何がどっちか」という食品の話でした。ここからは「じゃあ、どっちが効くのか」という話です。これについては、日本消化器病学会が出している診療ガイドライン(=医師が治療を進めるときの手引き)に、かなりはっきりした記述があります。正直なところ、この記述を紹介している腸活記事を、私はほとんど見たことがありません。
手引きが扱っているのは、お腹の痛みと便通の変化がくり返し起きる状態(過敏性腸症候群)についてです。そのなかで、食物繊維の効き方が2つに分けて書かれています。
| 水溶性(オオバコ) | 不溶性(小麦ふすま) | |
|---|---|---|
| 便秘の症状 | 有効(改善した割合が1.6倍) | 有効(改善した割合が1.54倍) |
| お腹全体のつらさ | 有効(改善した割合が1.55倍) | 悪化させたという報告がある |
| お腹の痛み | 改善する側 | 悪化させたという報告がある |
ここが決定的です。手引きには、小麦ふすまは「便秘の症状には有効だが、お腹全体のつらさや痛みについては悪化させたという報告がある」と書かれています。「1.6倍」「1.55倍」という数字は、見た目が同じ偽の薬を飲んだ人たちと比べて、症状が改善した人の割合が何倍だったかを表しています。
つまり——不溶性は「便を出す」には効くが、「お腹のつらさ」には逆に働くことがある。あなたが「便は少し出るようになったけど、張りと痛みはむしろひどくなった」という状態なら、それは体の不調ではなく、手引きに書かれている通りの反応です。
同じ量を12週間、正面から比べた結果
手引きには、この2つを直接比べた調べ方も紹介されています。18歳から65歳までの275名を、本人にも分からないようにくじ引きで3つのグループに分けます。オオバコを毎日10g摂るグループ、小麦ふすまを毎日10g摂るグループ、見た目が同じだけの偽の薬のグループ。それを12週間続けました。
| お腹の痛み・不快感の改善 | |
|---|---|
| オオバコ (水溶性) |
1ヶ月目・2ヶ月目ともに、偽の薬よりはっきり改善。つらさの度合いを点数にしたものも、3ヶ月目にはっきり下がった |
| 小麦ふすま (不溶性) |
よくなる傾向は見えたが、偽の薬との差といえるほどではなかった |
そして手引きは、それまでの調べを集めた結論をこう書いています。水溶性(可溶性)繊維の有用性は確認されたが、不溶性繊維については明らかな有用性が確認されず、繊維の有用性は水溶性のほうに限られる——と。
ここまでの3つを重ねると、絵がはっきりします。
① 日本人が足りていないのは水溶性のほう(3.5g対11.3g)。
② それなのに世の中の腸活食材はほぼ全部が不溶性優位(一覧に挙げた32品中、水溶性優位は0品)。
③ そして学会の手引きで効果が確かめられているのは水溶性のほうだけで、不溶性は痛みを悪化させた報告がある。
→ 「腸活を始めたら悪化した」は、この3つが揃った当然の結果です。あなたの体の問題ではありません。
なお、手引きには誠実な但し書きも添えられています。日本人を対象にした食物繊維の有用性については、今後の検討課題であると。海外の結果がそのまま日本人に当てはまるかは、まだ確かめきれていないという意味です。だからこの記事も「不溶性は絶対にダメ」とは言いません。言えるのは、あなたが張っていて痛いなら、不溶性を増やす手は少なくとも第一候補ではないということです。
あなたはどっち?——症状で決める3つの分かれ道
では、あなたはどうすればいいのか。判断の材料は「便の硬さ」と「張り・痛みがあるかどうか」の2つだけです。難しい検査は要りません。
① 便が硬い・コロコロ、でも張りも痛みもない
この人は、不溶性を増やして構いません。かさを増やして腸を刺激する働きが、そのまま欲しい効果になります。きのこ・ごぼう・玄米・おから——世の中の腸活おすすめは、この人のために書かれています。
ただし条件が1つあります。水分です。不溶性は水を吸って膨らむことで効きます。水が足りないまま量だけ増やすと、膨らみきらないまま硬い塊になって、逆に出にくくなります。「繊維を増やしたのに硬くなった」という人は、繊維の種類ではなく水が足りていない可能性があります。
② 張る・痛い・ガスが多い(出しても残る感じがある)
この人は、まず不溶性を増やす手を止めてください。そして減らす方向に動きます。順番はこうです。
| やること | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| ① 止める | 腸活のために「足した」ものを、いったん足す前に戻す。おからパウダー、きのこの増量、玄米、ふすま入りパン、豆の作りおき | 今日から |
| ② ラクにする | 今たまっているガスを動かす。締めつけを外す・温める・歩く | 今日、15分 |
| ③ 落ち着かせる | 発酵しやすい食べ物を一時的に休ませる(第7章) | 2〜3週間 |
| ④ 戻す | 水溶性を、押麦から少量ずつ。1週間ごとに少しだけ増やす | 4週目以降 |
「せっかく続けてきたのに、止めるなんて後戻りだ」と感じるかもしれません。でも合わない方向に3ヶ月続けるより、2週間止めて体の反応を見るほうが、はるかに早く答えが出ます。止めて軽くなったなら、それが答えです。止めても変わらないなら、原因は繊維ではないと分かる。どちらに転んでも、あなたは前より賢くなります。
今日のガスの抜き方と、張っている週の食べ物の選び方は、お腹が張る|今日ラクになる順番と、「足す腸活」が逆効果になる理由で15分の手順に落として書いています。この記事と対になる内容です。
③ ゆるい・下痢気味、出る日と出ない日がある
意外に思われるかもしれませんが、この人にも水溶性です。水溶性の繊維は「水を抱えてゲルになる」働きなので、水っぽい便には水分を抱き込んで形をつくり、硬い便にはやわらかさを与えます。どちらの方向にも「ちょうどいい真ん中」へ寄せる性質があるのです。実際、学会の手引きでオオバコの効果が確かめられているのは、便秘だけでなくお腹の症状全体に対してです。
逆に、ゆるいときに不溶性を増やすのは筋が通りません。腸を刺激して動きを速める方向に働くからです。
水溶性なら何でも正解、でもありません
ここまで読んで「よし、水溶性を増やそう」と思った方に、もう1つだけ伝えておかなければならないことがあります。張っている真っ最中の人にとっては、水溶性のなかにも避けたほうがいいものがあります。ここを飛ばすと、第二の失敗をします。
理由は第3章で触れた通りです。水溶性の繊維は大腸で細菌に分解されます。分解されるとき、水素やメタンといったガスが出ます。さらに、小腸で吸収されにくい糖の仲間は、腸の中に水を引き込みます。ガスと水が同時に増えれば、お腹は張ります。
学会の手引きでは、こうした「小腸で吸収されにくく、大腸で急に発酵する糖の仲間」を多く含む食品として、次のものが名前を挙げられています。
| 発酵しやすい糖を多く含む代表的な食品(手引きに記載) |
|---|
| 小麦 / タマネギ / ひよこ豆 / レンズ豆 / リンゴ / トウモロコシ / 牛乳 / ヨーグルト / はちみつ |
この並びを、もう一度読んでみてください。そのまま「腸活おすすめ食品リスト」です。ヨーグルト、りんご、たまねぎ、豆。腸にいいと言われて真面目に食べてきたものが、張りやすい人にとっては材料になりうる。これが、乳製品や飲料の会社が自社の記事では構造的に書けない部分です。自社の主力商品が、そのままこのリストに並んでしまうからです。
私たちはお茶の会社なので、この話を正直に書けます。そして同じ正直さで、あとで自社商品についても不都合なことを書きます(第9章)。
「張っている人向けの水溶性」はどれか
整理すると、張っている時期に選びたいのは「水を抱えるけれど、急激には発酵しにくい水溶性」です。手引きの記述から素直に導けるのは、次の2つです。
| 選ぶもの | 理由と使い方 |
|---|---|
| オオバコ (サイリウム) |
学会の手引きで名前が挙がっている、水溶性繊維の代表。お腹全体のつらさにも便秘にも改善が確かめられている。粉として売られており、必ず多めの水と一緒に、少量から始める |
| 押麦 (大麦のβ-グルカン) |
日常の主食で水溶性が不溶性を上回る、ほぼ唯一の選択肢(七分つき押麦で水溶性6.3・不溶性4.0)。白米に大さじ1〜2杯から。小麦で張る人は、大麦も少量から試す |
逆に、張っている今すぐには向かない水溶性もあります。たまねぎ・りんご・豆類は、水溶性を含んでいますが、上のリストに名前が挙がっています。落ち着いてから戻す組です。
そして、ごぼう・きくいも・らっきょうのような「水溶性が多い根菜」も、張っている時期は慎重にいきたいところです。理由は、これらの水溶性がイヌリンと呼ばれる種類で、腸内細菌のエサになりやすい=発酵しやすい性質を持つからです。落ち着いてからなら、むしろ味方になります。イヌリンそのものの働きと摂り方は、イヌリンとは?|腸が変わる水溶性食物繊維の効果・摂り方にまとめています。
今週から変える5つ——足し方より「置き換え方」と速度
ここまでの話を、今週の買い物と食卓に落とします。新しいものを買い足すより、すでに食べているものを入れ替えるほうが、失敗しません。量が勝手に増えないからです。
❶ 白米に押麦を大さじ1杯。ただし増やすのは1週間に1杯まで
いちばん効率がいいのがこれです。毎日食べるものの中身が変わるので、意識しなくても続きます。米2合に押麦を大さじ1杯から始めて、お腹が何も言わなければ、次の週に大さじ2杯へ。
大事なのは速度です。「1日で目標の25gに届かせる」ような増やし方をすると、水溶性でも張ります。腸の中の細菌が増えた材料に慣れるには時間がかかります。1週間に1段だけ。これが、失敗しない唯一の速度です。
❷ 「足す」のをやめて「入れ替える」
| よくやる「足す」 | 代わりの「入れ替える」 |
|---|---|
| ヨーグルトにおからパウダーを混ぜる | ヨーグルトをやめて、白米に押麦を混ぜる(水溶性0.4対不溶性11.1 → 6.3対4.0へ) |
| 白米に雑穀・玄米を足す | 白米に押麦を混ぜる(玄米ごはんは0.2対1.2で不溶性側) |
| サラダにきのこを増やす | きのこは今の量のまま。増やすぶんを押麦に回す |
| 野菜ジュース・果汁で野菜不足を補う | 皮つきのまま食べる(りんごジュースは水溶性0.0対不溶性0.0) |
| 豆の作りおきを毎食足す | 張りが引くまで休ませ、落ち着いてから少量ずつ戻す |
| しらたき・板こんにゃくで水溶性を摂る | 水溶性を狙うなら押麦かオオバコ(板こんにゃくは水溶性0.1) |
「入れ替える」の良さは、総量が勝手に増えないことです。足し算を続けると、気づかないうちに1日の繊維が10g以上増えていることがあります。それが張りの原因になります。
❸ 皮をむかない・搾らない・揚げない
第4章の表で見た通り、りんごは皮つきで水溶性0.5・不溶性1.4、皮なしで0.4・1.0。搾ってジュースにすると0.0・0.0です。にんじんは皮なしを素揚げにすると0.3・0.8まで落ちます。調理法だけで、繊維は半分以下になります。
逆に、いちばん残るのは皮つきで蒸すです。さつまいもは皮つき蒸しで水溶性1.0・不溶性2.8。皮なし蒸しの0.6・1.7と比べて、水溶性が1.6倍以上になります。芋を食べるなら皮ごと蒸す。それだけの話です。
❹ 水を一緒に増やす(これを抜くと全部裏目に出る)
水溶性も不溶性も、水がなければ働きません。水溶性は水を抱えてゲルになる。不溶性は水を吸って膨らむ。どちらも水が主役です。繊維だけ増やして水を増やさないのは、スポンジを乾いたまま押し込むようなことです。
とくにオオバコの粉を使うときは要注意です。水が少ないと、喉や食道で膨らんで詰まる危険があります。必ず多めの水と一緒に、少量から。これは守ってください。
❺ 2週間、記録をつける(これが一番効きます)
最後がいちばん地味で、いちばん効きます。「食べたもの」と「その日のお腹」を、2週間だけメモしてください。スマホのメモに1行でいいです。「押麦大さじ1/張らず」「きのこ多め/夕方から張る」——これだけ。
なぜこれが効くのか。あなたに合う量と組み合わせは、この記事にも書いていないからです。人によって腸の中の細菌は違います。手引きが「日本人については今後の検討課題」と書いているのと同じ理由で、最後の答えはあなたの体しか持っていません。2週間のメモは、その答えを取り出す唯一の方法です。
今週やることは、これだけです。
① 白米に押麦を大さじ1杯(増やすのは週1段まで)
② 腸活で「足した」ものを、いったん足す前に戻す
③ 芋も果物も皮つきで蒸す・そのまま食べる(搾らない)
④ 繊維を増やした分、水も増やす
⑤ 2週間、食べたものとお腹を1行メモ
飲み物の話——繊維を活かすには「非カフェインの水分」がいります
前の章の❹に「繊維を増やした分、水も増やす」と書きました。ここはさらっと流されがちですが、繊維を増やしたのに水を増やさないと、便はかえって硬くなります。不溶性の繊維は水を含んでふくらむことで働くからです。つまり水分は、繊維の効きを決める側の条件です。
そして、その水分には条件がついています。機能性消化管疾患診療ガイドライン2020(=お腹の不調に対する治療の手引き)には、こう書かれています。
「症状を軽減するための食事に関する一般的な指導として、規則的な食事摂取、十分な水分(非カフェイン類)の摂取があげられる」
「症状を誘発しやすい食品(脂質、カフェイン類、香辛料を多く含む食品やミルク、乳製品など)を控えることは有用であり、提案する」
「水分はしっかり」と「カフェインは控える」が、同じ章に並んで書かれています。コーヒー・紅茶・緑茶で水分を稼ごうとすると、後半の条件で外れてしまう。ここに、カフェインを含まないお茶の役割があります。
では和のお茶の原料そのものはどうなのか。第4章と同じ、公式の成分表からの実数で出します。
| 食品(可食部100gあたり) | 水溶性 | 不溶性 | かたより |
|---|---|---|---|
| きくいも(生) | 0.5 | 1.4 | 1 : 3 |
| よもぎ(葉・生) | 0.9 | 6.9 | 1 : 8 |
| あずき(全粒・乾) | 1.0 | 14.2 | 1 : 14 |
見ていただいた通り、和のお茶の原料も、しっかり不溶性に寄っています。よもぎは水溶性0.9対不溶性6.9。あずきは1.0対14.2。菊芋(きくいも)ですら0.5対1.4です。「菊芋はイヌリンが豊富」と言われますが、成分表の内訳で見れば、生の塊茎は水溶性より不溶性のほうが多いのです。
そしてこれは「原料100gあたり」の数字で、飲むのは原料そのものではなく、お湯で抽出した液体です。つまり、担当が分かれているということです。
食物繊維を1日18〜25g積み上げる仕事は、押麦・オオバコ・野菜・豆・芋の担当。そしてその繊維を働かせる「非カフェインの水分」を、1日を通して切らさない仕事が、飲み物の担当です。「食物繊維入り」をうたう飲み物を探すより、この2つを分けて考えたほうが、はるかに早く変わります。
では、飲み物には何ができるのか
お腹が張っているとき、飲み物には条件がつきます。①温かい ②炭酸でない ③甘くない(人工甘味料も含む) ④カフェインが入っていない。冷たい飲み物は腸の動きを鈍らせ、炭酸は気体をそのまま胃に送り込み、甘い飲み物は発酵の材料になり、カフェインは手引きが名指しで「控えるように」と挙げているものです。
この4つを同時に満たす飲み物は、意外なほど少ない。水や白湯は満たしますが、味がないぶん量が続かない人が多い。そこが、ノンカフェインの和のお茶の居場所です。「腸に効く成分を足す」のではなく、手引きが挙げている「十分な水分(非カフェイン類)」を、毎日続く形で満たすため。繊維を増やす取り組みは、ここが抜けると空回りします。
| 時期 | 選び方の考え方 |
|---|---|
| 張っている今 | ドクダミ茶・よもぎ茶・あずき茶。冷たい炭酸や甘い飲み物からの置き換え先として。温かくして飲む |
| 落ち着いてから | 菊芋茶。イヌリンは発酵しやすい種類なので、張りが引いてから少量ずつのほうが理にかなっています |
繊維を増やす努力を、空回りさせないために。食事を変えるのと同じくらい、「1日を通して非カフェインの水分を切らさない」を先に用意しておいてください。
Neith Tea は、徳島の畑で4〜5月の若葉だけを摘んで天日で干したよもぎ茶、北海道産の小豆を特許を取った遠赤外線焙煎で香ばしく仕上げたあずき茶、四国・九州で手摘みして自然乾燥させたドクダミ茶、九州産の菊芋を低温でじっくり乾かした菊芋茶。4種すべて国産100%・無農薬・ノンカフェイン、JAS認証取得工場で仕上げた無漂白ティーバッグです。水や白湯が続かなかった人でも、香りがあるぶん自然に量が入ります。
原料は残留農薬250項目の検査を通り、有機JAS認定工場(加工34号)で仕上げています。番号から工場までたどれる、というのがいちばん確かな答えだと思っています。下の「今」と「落ち着いてから」で選んでください。
カフェインを含まないお茶の比べ方は、ノンカフェインのお茶おすすめ4選にまとめています。
これは受診したほうがいい——見逃してはいけないサイン
この記事は食べ物の話をしてきましたが、食べ物の調整で向き合ってはいけない症状もあります。日本消化器病学会の手引きでは、次のような症状がある場合は、お腹の機能の問題として片づけずに調べるべきだとされています。
| 分類 | 当てはまるもの |
|---|---|
| 警告となる 症状 |
発熱/関節の痛み/血が混じった便/6ヵ月以内に思い当たる理由なく3kg以上やせた/お腹にしこりが触れる |
| 気をつけたい 背景 |
50歳以上になってから症状が始まった/大腸の病気にかかったことがある、または家族にいる |
1つでも当てはまるなら、押麦を試す前に受診してください。繊維の種類を変えて様子を見る、という判断がいちばん危ないのはこの場合です。逆に、当てはまるものがなくて症状が食事と結びついているようなら、この記事の内容は落ち着いて試せます。
もう1つ。「毎日出ているのに張る」という状態は、便秘とは別のものとして扱われています。手引きでは、痛みも便通の変化もなく張りだけが続く状態を「機能性腹部膨満」と呼んで区別しています。この場合、下剤や繊維を足すより、ガスの材料を減らすほうが筋が通ります。
よくある質問
まとめ——あなたは失敗していない。方向が逆だっただけ
最後に、この記事でいちばん伝えたかったことを書きます。
きんぴらごぼうを作った人、きのこを増やした人、玄米に替えた人、おからパウダーを買った人。あなたは、まじめに、正しいと言われたことをやりました。それで悪くなったなら、責められるべきはあなたではありません。
日本人が足りていないのは水溶性のほうです(3.5g対11.3g)。それなのに、腸活の定番食材は上から下まで不溶性にかたよっています。そして学会の手引きで効果が確かめられているのは水溶性のほうで、不溶性については痛みを悪化させたという報告があります。この3つが揃っていれば、まじめにやった人ほど悪化します。それは仕組みの問題です。
だから答えは、がんばりを増やすことではありません。方向を変えることです。そして方向は、あなたの症状が教えてくれます。硬くて出ないだけなら不溶性でいい。張って痛いなら、不溶性を止めて水溶性へ。ゆるいときも水溶性へ。
今日できることは、たった3つです。白米に押麦を大さじ1杯混ぜる。腸活のために「足した」ものをいったん戻す。繊維を増やしたぶん、水も増やす。これだけで、来週のお腹は少し違うはずです。
そして、もし警告となる症状に当てはまるものがあったなら、押麦を試す前に受診してください。その判断ができたことも、この記事を読んだ成果です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や、記事内の「警告となる症状」に当てはまる場合は医療機関にご相談ください。
参考(一次情報): 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「炭水化物成分表 別表1」(食品ごとの水溶性・不溶性食物繊維/全1,345食品)/国民健康・栄養調査(令和6年)「栄養素等摂取量」/日本人の食事摂取基準(2025年版)「炭水化物」/日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020——過敏性腸症候群(IBS)」

